『嘘と嘘』
presented by 白菜様  
 

あのね、ハッキリ言うけど、あたしはね、あなたの事が大っきらいなの!
今日はそれだけはきちんとしておきたいから!
あなたのためにここに来てるんじゃないんだからね!


「それで?」
俺は、目の前―正確にはドアの前にいるから―3メートル前の少女に一言で返す。


「―!!あなたって人は…!!」
真空パックに入った干物みたいな、誰が見ても感心するほどきっちりと隙間無く制服を着こなした女子高生は、俺の言葉に一瞬怯んだ表情を見せたが、息をすぅ、と吸いこむと一瞬の静寂の後いったいどこから声を出しているんだと感心するくらい、ダムの放水みたいな音の塊を一気に出した。

「わかってる。君が勝手に来ているだけだ」

俺はベッド上に仰向けに寝転んで、女の裸や水着の載る質の悪い紙で綴じられた君曰く「オヤジ雑誌」と言われる週刊誌を手に取ったばかりだった。もちろん、君が来るのを知っていて。
平日の午後に適当な理由を伝えて会社を出ても疑う者など誰もいない。この小さな部屋に足を踏み入れたと同時に俺はネクタイを首から抜いてワイシャツの首元と手首のボタンを外してベッドの上に身を躍らせる。
君が来るまでの短い時間はひと月の中で唯一、頭の先から爪先までの全身で呼吸が出来る爽快な気分、所謂リラックスする状態になれるらしい。

「なんですって?あなたが呼ぶから来てるんじゃない!」

彼女の怒った顔は数えるのも面倒なくらい見てきた。君がどれだけ俺に怒鳴っても悪態を吐いても俺にとっては(当然だが)全く恐れることはなく、仕事の合間の良い気分転換にもなるから豆台風の来訪はむしろ大歓迎だ。

「…その約束に君を拘束する力は俺には無い。だが君は自分の意思でここに来ている、そうだろう?」
「な…んですって…」

いつも約束の時間通りに彼女はやって来る。俺が渡した合鍵を使って。
キィだかギィだかの頼りない音がして玄関のドアが開けられた事を知る。と同時に遠くで自動車のエンジン音や主張の激しい原付バイクの排気音、トラックであれば重く長い空気の層を震わせる音が聞こえてきて、この部屋が大きな道路沿いにあることを教えてくれる。

彼女はドアを自分が横になって入れるくらいの隙間しか開けない。
その理由は二つあり俺が社会人で誰がどう見ても成人男性で、彼女は制服を当たり前に着こなす高校生で当然未成年で既に性的関係がある事。モラルを問われればこれだけでお手上げだ。
もう一つは俺が社長で彼女が俺の会社に所属している女優という事実。学校の先生と生徒間の事ならば、そこに愛とやらが潜んでいたとしても確実に先生(俺)は社会的制裁を受けるだろう。
彼女も理解している。俺との関係が道徳や倫理・常識から対極しているという現実に。
だから世間を視線を意識して慎重に、素早くするりと出入りする為に少しの隙間しかドア開けないのだ。


「…ひどい、あなたって人は…」

仁王立ちする少女の足元に、雑誌を投げる。
低空飛行のそれは乾いた音を立てて、彼女の爪先から30cm離れてワイン色の絨毯の上に、男と女が絡み合っている写真のページが開かれて落ちた。

「―――君と同じだな」
女はブレザースタイルの制服を着て、いや実際は紺色の上着も白いシャツも、肩からずり落ちて両の袖しか覆っていない。膝立ちの高校生と言うには無理がある老け顔の女は大きすぎる乳房と褐色の乳首を突き出していて、左手でモザイクの入った男の性器を握りしめている。

「――い…いやらしいわね!こんな本読んで!」

眼球だけ下に動かして彼女は足元にある男と女の写真を確認すると、ベッドの上の俺を睨みつける。

「ああ。俺はいやらしいよ。そして君もな」
「…!」
「俺にキスしたり、裸になって俺に胸を触らせたり、ああ、アソコも触ってってオネガイするよな」
「俺のを咥えるのも、この間は楽しんでいたな」
「あああああ〜〜〜〜!!!むかつく〜〜!!」

右のふくらはぎが垂直に持ち上がり、白い靴下を履いた足の甲が上下する。
ドンドンと床を踏む振動が絨毯に吸いこまれ鈍い音が響き、白い靴下の動きが床のワイン色に映えて鮮明に見える。地団駄を踏む、ってやつだ。公共の場で泣き叫ぶ子供以外に久しぶりに目の前で見た気がする。
このマンションは見かけは古いが構造は丈夫なので、これくらいの振動が階下に響く事はないだろう。だからもう少し腿を上げてくれたら、君の内腿の奥の小さな布が見えるのに。

「何か言いなさいよ!」

面白いから、しばらく黙って見ている。

「じゃあなんでキスしたり、裸になってあなたに胸を触らせたり、
んん、あそこを触らせたりしているのかって言うのは
その理由はあんたが一番知ってるじゃないいー!!」

最初「キス」で声が裏返る。言い慣れていないからだろう。
くっと笑いが込み上げて自分のあごと首の繋がっている筋肉がひく、と動く。だがここで笑ってしまうと彼女の怒りを買う処か大きい瞳にみるみる涙が浮かんで、彼女は俺の前からあっという間に逃げてしまう。
今日は、今だけは逃げられては困る。

「母さんの居場所を知ってるって。
母さんの今いる場所が知りたかったら、俺の言うこと聞けって、
あんたが言ったから、あたしはこうして、あんたの言う通り、
こうやって何度かこの部屋に来てるんじゃない!」

「忘れたの?ああ、もうオジサンだから、自分の言った事も忘れちゃったんでしょ?」
「そうでしょ、大人の女に相手にされないから、あたしなんかとあんなことして、
恥ずかしくないの?自分の年齢考えなさいよ!オジサン!」

――はじめは俺の事を「あなた」と言っていた11歳年下の女子高生は「あんた」と発声した瞬間から何かのスイッチが入ったらしく、腹の底から通る声が部屋中に響いて、俺を罵る言葉なのに濁りのない弾ける音や抑揚を聞いていると舞台の上の君を見ている様な錯覚にも変わっていき――

「…オジサンオジサンって俺はまだ27なんだがな。チビちゃん」
マヤが一番嫌う呼び方で、わざと呼んでやる。
「なによ!オジサン!ロリコン!変態!」
頭に血の昇ったマヤが叫ぶ。

「そこまで言うなら、教えてやらんぞ」

俺は公の場で部下や頭の悪い取引先の連中を侮蔑する時に使う、顔は動かさず黒眼だけを対象の人物に向けてジロリと睨むというのをマヤにも試みる。社長と所属芸能人という関係になってからは無くなったが、それ以前の敵対する関係と言われていた時代は、お互い嫌悪と憎悪のぶつけ合いを公の場でもして来たので、彼女に何度もこの視線を投げかけた事がある。

今より2,3年前の今より更に幼かった当時のマヤは、俺を含む大人の汚い思惑には全く目もくれず、というよりは子供故の純粋さで打ちのめされても幾度も俺や大人に歯向かい、自分の力だけで這い上がって来た。小さな身体のどこにその情熱が潜んでいるのだろうと心底感服する。だからこんな視線も彼女にとっては傷つくというより自分が奮起する理由の一つに違いない。

寝返りを打って頭上のボードに重ねていた雑誌を一冊取り、適当に開いて読む真似をする。
もちろんこの雑誌も、さっき投げたモノと似たような下品でいやらしいオヤジ御用達の週刊誌。こういう雑誌を読むのも俺の仕事の一部だ。

「何よ…その態度」

はあはあと吐く息がドラマのワンシーンみたいだ。頬が真っ赤だよ、チビちゃん。

「速水さん!!」

どすどすと大股で歩いて、彼女は大きな音を立てて俺に近づいてくる。

馬鹿だな。
半径50センチ以内に近づいたら、どうなるか判ってるくせに。

君が握りしめたそれぞれの手が、骨盤の横でピン、と伸びていて。
ああそうだ、それだけで俺は興奮する。
そして、君も俺が欲しいときは、わざと絡むよな。

「…大きな声を出すな。そんなに怒鳴らなくてもお望み通りすぐに気持ちいいことしてやる。マヤ、前回の生理はいつ終わった?」

「…え…い・一週間くらい…前?ていうかなんでいつもソレ聞くんですか、速水さん」
威勢の良さは払拭されてマヤは小声でモジモジと俺に伝える。

「あのな、保健体育くらいはまともに勉強しろ。女性が妊娠可能な時期を排卵期って言うんだ。生理が何の為にあるのか知らないのか。女なら知っておくべきことだ。望まない妊娠のた めにもな」

「なっ…!速水さんのエッチ!!」

拳を振り上げる。それと共に浮き上がる、丸いふっくらとした胸。
多分今日の下着は俺が贈った外国製のモノだ。このブランドの下着はワイヤーとカップの形に定評があって、腕を上げると更に美しく乳房の曲線を彩るんだ。

マヤが振り上げた拳は、何時になっても俺に当たらない。
なぜなら、すでに俺が彼女の目の前に立っているから。
彼女の両手首を頭の上で俺の左手のみで捕まえているから。未だに30センチの身長差が理解出来ていないところがマヤらしい。

「…っ」

頭の上で両手を括られた状態で、マヤは身体をねじる。
俺に両手を囚われて、イヤイヤする仕草を彼女の頭上から眺めているだけでざわ、とした感情が湧いてくる。下半身の一点に血が集まるのが解り俺は鼻孔から静かに息を吐く。
綿と化繊で織られた白いシャツが、マヤの腋から腰までの線を彩り一筋の光沢が見える。
その布の下には小さな乳房と、薄い皮膚から浮き上がるいくつもの骨。

「それで?」

俺は左足をひょい、と浮かせて目の前の彼女の右の細い足首の後ろに回して、昔母がやっていた編み物の鈎針で毛糸をひっかけるように、ぐい、と自分に寄せる。

きゃあ、という声が響いて背後のベッドの上へふたりで飛び込んだ。


「…早く…あなたの好きなようにしなさいよ…」

どこで覚えてきたんだか、仰向けになったマヤに覆い被さると彼女は言った。
黒い髪が放射線状に伸びて、安いシャンプーの香りが俺の鼻孔をくすぐる。

マヤの瞳に俺の顔がやや湾曲して映る。
眼光の凝視で彼女が強い意思を持って俺を仰いでいる事が伝わるが、これは何に対しての意思の現れなのか出来る限りの彼女の言葉や表情を思い出しても今は理解不能だ――でも不思議なのは俺に対して嫌悪感が全く無いという妙な自信――。
彼女は俺とのこれからの行為を愉しみにしているのだ。セックスするということが。16歳の彼女にとって好奇心や興味本位だからと言われても素直に嬉しい。快感を得る・求める事が人としておかしなことでは無いと俺との行為で認識したという証拠だから。

「言われなくても、する」

小さな歯が覗く震える唇に俺の唇を重ねて、一気に舌を挿入する。
マヤの歯が当たるが気にしない。一度俺の唇をすぼめて彼女の唇の中に入り、彼女の上唇と下唇の中に俺の唇ごと挟まる状態にして力を入れて素早く口を開けて舌を奥に入れる。
反動で彼女の口腔が大きく開かれて「は」という声が聞こえた。マヤの歯列の裏側の上下をぐるりと舐めてそのまま舌の付け根の筋を下から何度もなぞる。

「―――んっ、ふっ――」

マヤの舌を唇の外へ出したいが、今日のマヤはなかなか言うことを聞かない。
舌を大きく掬って、先端を俺の唇で挟む。そのまま外へ引っ張る。

「んん―――ッ?!」
「舌を出せ」
「…ぅ」
「いいから、出せ」

困惑した表情のマヤ。そう、それでいいんだ。
子供の様に突き出した舌の先に、同じように舌先でつ、とひと舐めする。
乳首を舐めるように俺は舌を突き出して出来るだけゆっくりと、彼女のピンク色の舌をチロチロと舐める。

左手で掴んだマヤの手首が震える。

感じている。感じない訳がない。

俺の舌先を尖らせてマヤの舌の輪郭をたどる。側面を何度も往復する。舐め続ける。
「―――ん…んッ…」
唾液がマヤの唇から垂れたので俺の親指で拭った。

「…もっとしてほしいか」
返事は無いが、マヤの閉じた瞼を肯定の意思とみなして。
今度は口腔に奥深く舌を差しこむ。お互いの舌と舌を絡める。粘膜を舐める。顔の角度を何度も変えて。
やがてじゅ、ぐちゅ、という卑猥な音がお互いの脳内に直接響いてゆく。


いつも通りの、彼女の吐息と喘ぎ声と水音が部屋中を埋める。
マヤを抱くためだけに用意したコンクリートで覆われた、小さな部屋。




正直、こういう時の女は面倒だ。と思っていた。

触れて欲しいのに、違います、という顔をする。
舐めて欲しいのに、興味ありません、と目を逸らす。
含んで欲しいのに、嫌です、と首を振る。

マヤも同じ仕草をするが嫌悪を感じた事は一度も無い。

「…んンッ…いつになったら…母さん…あぁっ?…」

恥骨の上の、硬い黒い毛を両方の中指で掻き分けて、
人差し指で襞と襞を思い切り開いて、
剥き出しにした歪な丸い充血した肉を舌で突く。
じゅるじゅると、唾液なのか彼女の出す液体なのか粘り気のある音が響いて、
ひくひくと蠢く穴の中に、親指を一本、第一関節まで差しこむ。

軽く上下して抜き差しする。
「はッ――アぁァ…?…あぁっ…」

女ってのは――16歳も30歳も同じだな――

俺は唇の周りを粘液でびしょびしょにしながら、
女の性器を舐めるときの己の間抜けな姿を思い出して、口の端で笑う。

いつもならこのまま人差し指、中指と膣内に沈める指の数を増やしていって、中でく、と曲げたまま温かい壁の襞を指の腹で擦って、マヤが達する寸前で指を抜いてまた入れて、そしてクリトリスを散々弄って…と彼女が泣いてオネガイするまで待つのが俺の性的嗜好だが、今は其処に至るまでの奉仕をする気分にならず、自分の衣服も全く脱いでいない状態だった。

俺の下に横たわるマヤを熟視する。顔は背けて目を瞑り次の快感をシーツを握りしめて待っている。上半身は全て脱がしてしまって小さな乳房と規則的に走る何本もの骨。腰にはくしゃくしゃに畳まれた制服のスカートが、そしてそのすぐ下には剥き出しの性器がよく見える様に限界まで開いた両腿の裏側――。

未成年、16歳の少女相手への性行為とその姿に興奮してしまう俺はエフェボフィリア*注)の資質があるのではと、初めてマヤを抱いた後、仕事上観る・会う機会の多い女子高生を何十人も想像して、何の感情も湧かない事実に安堵する、というのを会社のエレベータでの待ち時間、資料を確認し終わった後など、ふとした瞬間に確かめた時期もあった。結局今現在はマヤのみが対象らしいという結論だ。

彼女の制服は上下が繋がるワンピースタイプなので、脱がす行程が面倒な時はマヤの腰周りで固まりのまま留まってもらう。挿入の前には剥ぎ取るが、その時点でシワだらけだ。

―もう!また制服がシワだらけじゃない!―
前回の事後のマヤの言葉を思い出す。速水さんのせいだ!と言いながら頬を膨らます彼女の瞳が穏やかだった。
制服のスペアはあるから大丈夫だろう。
高校に入学する時に贈った品々のリストが脳裏に浮かぶ。


「マヤ」
唇を左手で拭って、右手で乳房を掴んでマヤに圧し掛かる。

「…知りたいか?」

快感に震える女は皆目を瞑る。眉間にシワを寄せてまるで自分だけが被害者みたいな、自分だけが罰を受けている淑女の如く。

「―――え?」

「君の母親の居場所」

「なっ…きまっ…て…」
とろりとした、潤んだ瞳。さっき俺に怒鳴った時の半分しか開いていない。
快感に酔ったマヤは、16歳の少女ではなく立派な女だ。

乳首をすっ、と親指で掠る。
マヤの眉間が再び寄る。
乳首に乗せた親指の腹を起点にして、そこから親指が触れたままゆらゆらと動かす。
彼女から、はぁ、という湿った息が漏れる。

「いいか?」
「…」
もう一度聞く。
「気持ちいいか?」
もちろん、返事はない。だが、吐く息が答えだ。

「…居場所を知ったら……俺とこうすることも…」

次に人差し指で、乳首の側面をさする。
小刻みに、軽い力で規則的に。
親指を浮かして、じっくりとそれを見る。
頂きの小さな表面に、何本かのねじれた皺が刻まれていて。


――ここから母乳が出てくるんだな――

男が女の乳首を口に含みたいのは、何故なんだろうな。
あの義父も母に同じ事をしたのだろうか。

そして、マヤもいつか子供に乳首を含ませる時が来るんだろうか――

――――!!――――

一瞬自分の脳裏に浮かんだマヤと俺との甘い情景を打ち消したくて、
彼女の乳首を乱暴に含んで、力いっぱいに吸った。

「…ぃ、たい…」

俺の肩に痛みが走って、掴んでいたマヤの指の爪が食い込んでいることに気付く。

「あ…」

すまない。

「え…?」

マヤの身体から唇を離して、彼女の顔を見下ろすとお互いの視線が合った。
マヤが真顔で俺を凝視している。

「どうした?」
「今、はやみ…さん、すまない、って」
 ……。
「なんだか…初めて。速水さんが、謝った…の」
「いつも、あたしがイヤっていっても変なコト…するくせに…」

「そうだったか…?」
マヤの身体から離れて、彼女の右側へと同じ様に仰向けになる。シーツの冷たさが背中全体に心地よく伝わる。

「…どうした…の?」
顔だけを俺に向けて、マヤが言う。

「…なんでもない」
「さっき言ったこと…」
「ん?」

「母さんの居場所を知ったら…俺と…って」
半身を起こして、マヤが俺の顔を見つめる。
二の腕に押されてふたつの乳房がやわらかく谷間を作って寄っている。

――キレイだな――
俺は、彼女の乳房の曲線とその谷間の影を見てぼんやり思う。
世間ではまだ昼間と言われる時間帯で、窓から陽の光が入り彼女の裸体の輪郭がぼやけて見える。

「…あたしと、こうしたいから、教えてくれないの?」

マヤは俺の目を見つめたまま微動だにせず言う。
俺の眉と瞼に力が入り歪むが判る。
ああ、またマヤの罵る言葉が俺に降るんだな、と初めての時の彼女を思い出す。

――速水さんのバカ!!――
――嘘つき!あんたなんか大嫌いよ!――
――大嫌い!死んじゃえ!――

「…変な速水さん」
かち、と軽い音がして、それが彼女が下着を身に付けた時のホックを引っ掛ける音だと気付く。

ベッドの上で、仰向けのまま顔を倒してマヤの背中を眺める。
髪の毛の間から覗く白い首筋、肩のライン、肩甲骨と背中の中心に伸びる一筋の線。
なだらかな線を描く細い腰、そして―。

マヤの腰から下の上半身にまるでそぐわないたっぷりとした尻を眺めていたら、彼女の上半身がいきなり視界から消えた。
しばらくして彼女がベッドに下に落ちているシャツを掴んだのだと気付く。

そのまま彼女はベッドの下にすとん、と落ちて、座ったままモゾモゾと動いている。
多分、俺が脱がした小さな下着を履いているのだろう。
彼女の豊かな黒い髪が、肩が、シュ、シュ、という布の音と共に細やかに揺れる。

「どこ見てたんですか。オジサンみたい!」

シャツのボタンを首元一つだけ開けた状態でマヤは再びベッドの上に登ってきた。
ネクタイはまだ締めていないが、制服を纏い女子高生の顔をして。
「さっきまで散々俺のことオジサンオジサンって言ってたのは自分だろう」

俺の横に正座して、マヤはいつものお約束の言葉を吐く。

「もう…!またスカートがシワだらけじゃない…」
ほこりを掃う仕草で膝の上のグレー色のウール地の表面を撫でる。
次にあごを引いたまま俺を見る。前髪が彼女のまつ毛に重なる。
瞬きを3回したのち伏目になりそのままきゅ、と結んだ唇が開いて。

「次」
「…ん?」
「…次は、いつですか」

「社長さんもお忙しいとは思いますけどね、あ、あたしだっていろいろ予定があるんです」
「今度またドラマも始まるし、テストもあるし…」
話しながら両手の指と指をぎゅ、と組むのは彼女のクセだ。
やがて、人差し指どうしを擦り合わせる。

彼女のくるくる動く小さな爪を見ているうちに、思い出す。
ああ、そういえば。
今日はまだマヤに俺自身を触ってもらっていないし、彼女をいかせていない。

「ここ」

俺は自分の腰の中心の、ストレートに言うと股間に指を差して。

「ここ、触って」

「―――もう!たまにはあたしの言う事きちんと聞いて下さいよ!」

一瞬で真っ赤になるマヤ。
…もう何度もその指で触って、唇に含んでいるくせに。

「いつも聞いてる。特にいやらしいことをする時はな」


「…バカ!速水さんの変態!」
拳を振り上げたマヤの両手首を取って、彼女をベッドの上に押し付ける。
ふわ、と風が舞って俺の脳内に彼女の髪がはらりと広がる残像が見えた。

再び始まる、粘った体液と吐息が絡まる営み。

お互いの身体の芯と芯が繋がって、彼女の両足首を掴んで靴下ごと俺の肩に乗せた瞬間、マヤが歓喜の声を上げた。俺は快感という真綿に性器と思考をじわじわと締め付けられて逃げ場を求めて息を吐く。
自らの乳房の上で祈るように両手を組み合わせたマヤが鼻先を枕に押し付けて言った。

「…速水さんなんて…大嫌い…」

俺は、大好きだけど、な。
言葉のかわりに、彼女の温かくて狭い芯に己の腰を思い切り打ちつけた。


END.


*注)エフェボフィリア:成人男性による、思春期の男女の児童(13 - 17歳)に向かう倒錯した性的嗜好のこと。by wikipedia


あとがきという名の平謝り 〜白菜様より頂いたラブレターより抜粋〜

本当にすみませんすみません申し訳ありません!!
そして読んで下さって本当にありがとうございます!!「眼が滑る!」「長い!」「エロくない!!!」「真澄がヘタレ!」とお思いになるのを承知で書きました。あああーすみません!
初めてのエロ、PCの履歴が大変な事になっています…。難しかったですー!!

この文章を書くきっかけとなったのが、先日ライラさんがおっしゃっていた「身体の関係はあるけれど心は…」の高校生マヤとマス、というのに魅かれて、ライラさんの描く「高校生マヤXマス」が好きだなぁと思い浮かべたら、ババババーと頭の中に振ってきたんです。
なので、この作品(とは言いにくいけれど)はライラさんの作品の二次作品なのです。

ライラさんの描く世界が、文章が大好きで、速水さんが大好きで、いつも悶えて萌え死にしています。
ライラさんの描くマスに少しでも近づけたら…と思ったんですけど…。うううわああ(泣)すみません…。
私の描くマスミンのヘタレ・M具合は、私自身が反映されています。
この文章を読んで下さって本当にありがとうございます!
そして、こんな文章を受け取って下さったライラさん、心から感謝申し上げます!本当にありがとうございました!


蛇足的な萌え語り&大感謝祭〜涙と共に〜

――というわけで、この度頂いてしまったこの爆弾プレゼント!!
このところの日常のストレスが一気に吹き飛び、ただただニヤニヤが止まらない――ッ(ノ´∀`*)
白菜様との出会いはマコ様宅での絵チャでの事(ステキな出会いが多い絵チャですww)。
「はくさい、サマと呼んでよろしいですか?」っと他にどんな呼び方があるっちゅーねん、なご挨拶に始まり、
実は前歴より遊びに来て頂いていた〜という秘密を告白されては白目滝汗になり、というトコロからメッセを頂くようになりました^^
そして…どうですか、この衝撃の初エロパロ『嘘と嘘』!!
以下、白菜様に送りつけたラブレター@鼻血塗れから抜粋。

親父雑誌を読む社長。隙間から滑り込むマヤたん。生理周期を平然と尋ねる社長。贈られた下着を躊躇いなくつけてきちゃうマヤたん…
次々と繰り出されるMY・捻じれ・ツボポイントの嵐!!私の作品から派生…ってのにも白目ですが、これはまさに二次が二次を呼ぶ現象…
四次化現象とでも名付けましょうか!!(相乗効果ッ

とはいえ。当然ながら、やはり白菜様独自の世界なんですよね。
私の高校生マヤマスよりも更に進んだ関係(ウチは頑なに処女だけは避けてます(笑)、
その中で悩むことを先延ばししつつ冷静にマヤを見下ろす社長の視点、行為のみを正当化させつつ心の奥底に潜む感情は無視したいオフタリサンの嘘と嘘―
いやあ、お見事です。ゾクゾクついでにこちらの子宮までじくじく疼くような(グハッ)素っ晴しいい〜〜いっエロパロでございました!!

続いてややしつこく萌えポイント語らせて頂くと(笑)。
最もエロス!なのは冒頭の「舌舐め」ですね!!
個人的にエロパロを書く上で「エロ描写」のポイント(フェチ)は一点に絞るべき、なーんて思ってるんですが、当作品でいえばそればこの「舌の側面を舐める」ではなかろうかと。
ガラパロ広しといえどもこの描写はみたことないです!
そこから「乳首→母乳→抑えていた甘い想像」へと見事につながり、浮かびかけた切なさを行為で打ち消す…ああ、もう、最高です!!
あと寸止めならぬ「なんちゃってエンディング」から一気に突入!もツボすぎて悶えましたwww
私の性癖を心得てらっしゃるのか白菜サマと嗜好が片割れ同志のせいなのか…どっちにせよ超嬉しいですwww

白菜様!!!
これが最初で最後のエロパロなわきゃーないでしょ!っとにこやかに微笑みつつ、最大限の愛とハグを返させて頂きますw
今後とも、どうぞ宜しくお願い致します♪
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ビシバシ送りまくって下さいませ〜!!
2011.2.20 ライラ
           

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