第5話



この第5話には『お絵かき日記』のマコ様より賜りました挿絵が挿入されております。
拙文の至らなさを補いかつ皆様の妄想をさらに深化させること間違いなし!ですので、
背後に気をつけたい方は特にご注意の上、
ドキドキとスクロースしていって下さいませ(●´艸`)

  

化粧室の外から不明瞭な声が聞こえてくる──先客のカップルだろうか。 それは部屋の奥からやってきて、こちらに少し近づいたかと思うと、パタンと閉じたドアの音とともに消えた。今や室内は完全に俺とマヤの二人きりのはずだ。 足元から壁、天井に至るまで鏡のような光沢を放つ黒大理石が敷き詰められた空間。 その洗面台に後ろ向きにもたれかかりながら、目の前に立つマヤを見つめた。 白いレースの裾の下で所在なげに指を動かしている。 間接照明の淡い光に浮かび上がる、熱を秘めたその細い身体。 これから彼女が”知らない”ことを教え込む。 常の彼女なら決して貪欲に学ぼうとはしてくれないような事を。 邪な俺が今までそれを妄想していなかったとは言わない。 だが、まさかこんな場所で、こんなタイミングで実現するとは思いもよらなかった。 これまで平常心を装ってはいたが、実の所俺もかなり酔っているのかもしれない。 腕を伸ばし、マヤの右手を取って最後の説教をする(当然、吐かせる前に念入りに消毒済みだ)。 「言うまでもないが、二度とあんな事はするなよ」 「──は、はい。勿論、です」 「本当にわかってるんだか」 か細い指先にそっと口付けると、そのまま自分の頬に寄せた。 ここからは身勝手な時間の始まりだ。 「『アニーは棒付きキャンディーが大好き』。そういう歌詞だ」 片脚を伸ばし、マヤの腰を搦め捕る。 よろけた彼女は俺の太股に両手を付く。 そのまま俺は自分のスラックスのベルトに手をかけ、外した。 マヤがハッと息を飲む音が聞こえる。 付き合い始めて半年になるが、その間に肌を重ねたことは数える程でしかない。 全てが初めてのマヤに対して、俺は常に壊れ物を扱うような慎重さで触れていたため、こうした行為のみを要求したことはこれまで一度もなかった。 が、ほぼ無理矢理とはいえ、溝河へのあの行為を見る限り、マヤは勿論ソレが何のために行われるかを知っている。 太股に置かれていた手が、ゆるゆるとそこに集まる。 その先を躊躇っている指を先導してジッパーを開けてやると、一瞬俺の顔を見上げて、それから思い切ったように侵入してきた。 上から見下ろしていても、うつむいた彼女の白い耳朶が真っ赤に染まっているのがよくわかる。 その爪と吐息の感触に、まだ半信半疑だった俺の欲望がじくりと現実味を帯びて疼き出す。 「やりにくいだろう、床に膝をついてみろ」 「あ、ハイ──」 小さな二つの膝小僧が、黒い床にペタンとつけられる。 俄に激しくなる動悸を堪えながら、俺は次の行為を待ち望んでいた。 が、やはりなかなかその先に進めず、マヤは困り切った顔で俺を見上げる。 「残念ながら最初から棒付きって訳じゃないんだ。そうするのが君の役。 ――それとも俺が自分でやろうか?」 「あ──の、そ、その……」 「俺がいつも君にどうしてるか、思い出してみろ」 「……うん」 ふ、と、僅かに笑ったようだった。 垂れ下がった髪を右の耳にかけ、そのままゆっくりと脚の間に顔を埋めてきた。 徐々に反応しかけていたそれが、黒髪の中でちろりと蠢く感覚に首をもたげ始める。 背後に右手をつき、左手でマヤの髪をゆっくりと撫で回す。 俺の白い小鳥は、脚の中に囚われたまま、甘い悪戯に没頭し始めたようだ。 両手を俺の膝に軽くそえ、顎だけ上げて必死で舐めしゃぶっている。 薄い舌が、最初は遠慮がちに、やがてやや大胆に俺を誘い出す。 まんまとその誘いに乗って、俺の欲望はどんどんと形を成してゆく。 俺は顎を上げ、溜息を逃しながら、多分呆けた笑みを零しているに違いない。 「んっ……あぁ、……ふ」 「──そんなに焦るな」 「……ぁ」 遂に下着で覆い隠せなくなったそれがマヤの口を突き上げた。 暗めの照明の中にも明らかに、生々しく屹立する肉塊。 少し顔を離して、マヤはしげしげと観察している様子だ。 「可愛いもんだろ?」 「もう、すぐそう──でも、確かに……ちょっと可愛いかも」 普段の自分の愛情表現は複雑に入り組んでいるだけに。 全てのてらいを取り払った肉体の素直さを前に、マヤもいつも以上に柔らかく、素直に、こちらがドキッとするような台詞を戸惑うこともなく言い放つ。 「好きになれそうか?」 「ん──スキ……」 「俺が、それともコレが?」 「しらない」 戯れるようにそっと。 俺のピンク色の先端に人差し指を沿わせた。 僅かな凹みから一滴、涙が零れる。 すると小さな5本の指が、きゅっと握り締めてきた。 柔らかく熱いその掌の中で、肉体的な快感と様々な感情の奔流に飲まれ、俺は狂おしく身悶えした。 マヤは少し驚いたように、だが口元には仄かに笑みさえ浮かべながら、再び悪戯を始める。 その舌の動きは、まさに棒付きキャンディーを舐める少女の無邪気さ──に覆い隠された、淫靡な行為に他ならず。 濃い睫毛を伏せ、ちろちろと舌を忙しなく動かすマヤの姿は、ますます俺を熱く、甘く、蕩けさせる。 ぴちゃぴちゃと湿った水音に比例して、唇の端から一筋。 彼女の唾液と俺の体液が混じった筋が零れて顎の先に消えてゆく。 ゾクゾクと足の裏から伝わり腰へと突き抜けてゆく快感の波に酔いながら、俺はマヤの頭を強く押さえつけた。 マコ様!ありがとおおお!!! illustrated by マコ様 「大分お行儀が悪い」 「ふ、……ぅうっ!」 小さな口の中に無理に侵入すると、嘔吐いたマヤが低く呻いて眉根を歪めた。 そのままぐっと喉の奥まで突っ込むと、苦痛に歪みながら、それでも受け入れようと全身を突っ張らせて堪えている。 その様にすっかり嗜虐性を刺激されてしまい、俺は両足で彼女を動けないよう拘束したままで何度となく彼女の口の中を犯してゆく。 ざらついた喉の熱さと、舌の表面の僅かな柔突起の刺激がどうしようもなく気持ちいい。 彼女の呼吸や姿勢の苦しさを配慮する事も忘れて。 ただただ動物じみた欲望のままに腰を振る。 差し込んだ指を掻き回しながら、小さな頭を抱え込むようにして前後させ続ける。 ――抑えられない溜息が音になる。 彼女の名前すら形作れない、だらしない声。 涙や、汗や、いろんなものが入り混じってぐちゃぐちゃのマヤ。 冷え切った空間にどろりと、とろみがついて――俺たちの意識に絡みつく…… ちょっとしたミスはその時に発生した。 行為に夢中になった俺の性急さが招いたともいえる、よくある事。 つまり── 「っつ……」 「あ!」 ふいに現実に引き戻されたのか、慌てふためくマヤの声。 彼女の真っ白な貝のような歯列が、俺の一番敏感な部分に引っかかったのだ。 確かに痛いことは痛い。 が、この興奮状態ではこの程度の痛覚は快感と紙一重のようなもので。 俺はゆっくりと息を吐き出して痛みと折り合いをつけ、それから大丈夫だと眼で彼女に伝えた。 ──が、元々慣れない行為だったこともあり、我に返ったマヤは先程までの小悪魔ぶりはどこへ消え失せたのか、後悔の涙を浮かべながら小さく震えているではないか。 折角のお愉しみがこれで消えてしまうのはあまりにも──と焦った俺は、強引に彼女の手を引き掴み、握らせると、続けるように囁いた。 緊張ですっかり強張ってしまった彼女は、それでも懸命に応えようと努力していた。 そう、それは必死で切ない程の努力だった。 決して器用なたちではない彼女は、緊張も手伝ってさらにミスを重ねた。 そして。 「ああ、歯を立てるのは狼少女の時だけにしてくれ」 なんて、余計な事を。 一応、慰めのつもりだったんだ──彼女を笑わせ、緊張を解いて欲しいと思って言ったつもりだった。 そこに皮肉の色が強ければ、当然彼女は萎縮してしまうのに。 潤んだ瞳には様々な表情が浮かび上がり、俺は自身の迂闊さに責め苛まされ。 謝罪の言葉を口にする前に、マヤは俺の拘束を解き放ち、風のように黒い部屋を飛び出していった。 後には行き場を失った欲望が惨めに屹立するばかり── 途方に暮れたまま、習慣的に一服しようと手が動く。 それからこの場所が普通の場所ではないことを思い出して慌てて跳ね上がる。 あのマヤもいつもとは様子が違うのだ。 そういえば、カノンに話があるとか何とか言っていた。 ……冗談じゃない、溝河は勿論、あいつの心や身体が男だろうが女だろうが、マヤに妙な関心があるのは間違いないのだから。 web拍手 by FC2

last updated/10/11/30

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