第6話


「ごめん・・・マヤがやって」 「えっ・・・あ、うん・・・」 ふっと、真澄の両腕が、マヤの身体を落とさないように支えつつ、スカートの下にその両手を誘い入れる。 おぼつかない指先で、やっとのことで――ベルトを外し、ファスナーを引き下ろす。 ・・・既に存在を主張して憚らない、熱い感触が小さな掌の中で蠢いている。 「ああ・・・」 真澄は目を閉じて、マヤの両肩を支えたまま、その鎖骨に顔を寄せる。 マヤも・・・ここまでくれば、自分が何をしたらよいのか、おぼろげにわかってくる。 だが――だが、こんなことを、しかも外でするなんて勿論初めてのことで、 大体何をどうしたらよいのかも確信が持てないから、躊躇する。 「・・・マヤがしたいようにしたらいい」 それを感じ取ったのか、真澄が低く呟く。 そっと、頭を揺らして・・・支えるように、頬を寄せて。 「速水さん・・・」 「ん・・・」 「・・・」 何を・・・言えばいいのだろう。 何も・・・言えるはずがない。 ただ、恥ずかしさを越えた先に、愛おしさがある。 先程までのはちきれそうな衝動とはまた違った――穏やかな愛しさが。 「あ・・・」 真澄が、微かに声を上げる。 小さな両手は、ゆっくりと――おずおずと、動き始める、真澄の全てを感じとれるように、 その全てを掌から全身で感じ取れるように、ゆっくりと、ゆっくりと・・・ 「あ・・・ああ、そう――」 「い、痛くないですか?」 「いや・・・いい。あ、・・・ああ、最高だな・・・」 抑えた息と、低い声が、今まで感じたことのない感情に火をつける。 そっと、真澄の真似をしてみた。 片方の手を、気づかれないように唇にもってゆく。 濡れたその指で、硬く熱く蠢く先端から全体をずるりと撫で上げてみる。 真澄の半身がぐっと跳ね上がり、膝に乗せられたマヤの身体が浮き上がる。 初めて――真澄の先程までの行為の意味が、何となくわかったような気がした。 気持ちよくなるのと・・・させるのとは、また違う悦びがあるものだと。 「・・・ああ、バカ。覚えたな」 「し、知りませんっ・・・い、いい・・・んです、か?コレで」 真っ赤になったまま、顎の下で見えない真澄の頭を覗き込む。 何も言わず、ぐっと抱きしめられる。 ひんやりと風が吹き、髪を揺する。 マヤはふと顔を上げた。 遠い、山の遠くに最後の夕日の名残が見えた。 真澄の――美しい肩の筋肉と、首筋のラインが薄ら浮かび上がる。 こうしてぴったりとくっついていると・・・ 穏やかで、泣きたくなるほど・・・幸せだ、と思う。 「速水さん・・・大好きです・・・」 ぽろりと、涙と一緒に言葉が零れ出た。 一瞬の間の後、穏やかな声が返ってくる。 「・・・ありがとう」 「お、お礼言われちゃっても。変です」 「そうかな・・・」 「そうです・・・」 ふううっ、と深く呼吸する音がして。 真澄の身体が大きく動き――伏せた顔がマヤを見上げ、そのまま強く口付ける。 深い、深い、深いキス。 そしてそのまま・・・ ぐっと、マヤの身体が一瞬浮かび上がる。 勢いよく腕の中に引き寄せられ、もっと深く・・・ひとつになる。 「ッ・・・あ、ああああっっ」 「すごい・・・熱い、蕩けそうだ・・・」 「ア・・・駄目・・・い、痛・・・」 「力抜いて…大丈夫か?」 「う、う・・・ん、んッ・・・あっ」 蠢きが――自分では制御できなくなる。 我と彼の区別が・・・曖昧な境界を超えて、溶けきってもうわからない。 互いに腰を動かし合い、擦れ合って、ドロドロに堕ちてゆく。 真澄の目線の先に、白く喘ぐ細い喉が見える。 一筋、二筋と、滴り落ちる汗に舌を這わせる。 増幅した快感は、最早抜き差しならないところまで押し寄せてくる。 スカートの下は、びちゃびちゃと猥らな音を立てて、 肉と肉は時に滑り、姿勢を整えながら――角度を変えて、また動く。 「・・・マヤ・・・マヤ、マヤ・・・」 「は・・・い・・・は、速水さん・・・もう、もう」 「イきそう・・・?」 「も・・・や、あ、ああ、やあああっっっ!!!!」 掠れ声が、闇夜に高く響く音となって弾ける。 ビクビク震える、その最後まで余すところなく掻き混ぜ、抱きしめ、名前を呼ぶ。 限界寸前のところで――くっと引き上げて、自らも分解する。 バラバラに砕け散った・・・残骸を、遠く眺めながら。 それでも、かけがえのない存在を、もう一度この手にしたくて、泥の底から何とか蘇る。 それはすぐ側にある、奇跡のように。 多分・・・これからもあり続ける、そうであるよう、全力を尽くして守る。 波打つ身体を互いに支えあいながら。 ようやく、ゆるやかに離れる。 熱い頬に、軽いキスを。 段々、夜風が肌寒くなってくる。 小さな身体を再び抱き上げて、部屋の中へ。 窓を閉め、カーテンを引いて――もう一度、覗き込む。 「・・・速水さん」 「ん・・・」 「私、速水さんと・・・結婚、したんだよね」 「ああ」 「ちょっとまだ信じられないけど・・・さっき、思ったの」 そっと、ラタンソファの上にふたりは座り込む。 膝を抱え、丸くなりながら、マヤは呟いた。 「さっき・・・側にいるのが、凄く嬉しかった。  速水さんが、一瞬だけど・・・私の中に、ぱあって・・・入ってきたの。  すぐ離れちゃったけど・・・でも、今も側にいるのがね」 切れ切れに言葉をつなぎ、それから少しこちらを見上げて微笑んだ。 「凄く、幸せ。大好き、って思った」 「・・・」 この笑顔に勝る言葉は、きっと一生、見つからない。 そのかわりに、きつく抱きしめた。 いつまでも、いつまでも・・・ここでこうして抱きしめていられたならば。 「愛してる。マヤ」 不完全な、愛の言葉はただ胸を切なくさせるばかりで。 だけど今の真澄にはわかっている、きっとこれは幸せな痛みなのだ。 生まれて初めて感じる、この痛みは。 END. web拍手 by FC2 …っぷっはーーーーーーー!!!!!!! ぎょーん…またしても夜が明けてしまいました^^; 私ってばなんでいっつも東下り寸前に仕上げようとしちゃうんだろう・・・ ズバリそれはギリギリ族だからでございます・・・あーあ。 というわけで、今回は50,000ヒットをフミフミしてくださった○○○○様のリクでございますvv >新婚ホヤホヤのラブラブ&甘甘な2人が見たいです。 >あと、ムフフも入れてくれるとうれしいです☆ >新婚で色々マヤに試してみたい真澄さんが野外とかいろんなトコで・・みたいな感じで☆ とのことでしたが・・・ひえええ、またしてもリク内容をかすってるだけな悪寒・・・ 新婚――なんか無理矢理臭いし野外もより無理矢理っぽいですよね・・・ おまけにUPがこんなに遅くなってしまい、本当に申し訳ありません!! とはいえ、リクって本当にわくわく楽しいもんです〜♪ ○○○○様、この度はどうも有難うございました!!! 2005.7.16 ライラ

というわけで前歴時の後書きなんかもはっつけてみました。東下りってのは――当時東京と京都を行ったり来たりする隙間にパロ書いてたんです。
今も昔も、リクというのは有り難きインスピレーションの泉。ゲッター様のご希望に沿えているのか、というと・・・
特に私の場合勝手にドリーム甚だしきことマリアナ海溝の如し、なので――申し訳ありません、と土下座しまくる次第です。
でもでも、ホントにいつも皆様ありがとうございます!!

さて、今回の『痛み』というタイトルについて。速水氏とマヤの、苦しい過去を乗り越えてきて今に至る心の痛み、も勿論のことながら。
辛いときだけでなく、幸せ過ぎても何故か切なく狂おしく悩む――というような経験、皆様もきっとあるのではないでしょうか?
幸せだからこそ感じるその『痛み』。ずっと永遠に続くもの、なんてあるはずがない、とやや冷めた?悟った?涅槃ライラは確信してたりするのですが(汗
それだからこそその瞬間はかけがえのないもので、後生大事に抱えて、仮に全てを失ってもその想いだけで強く生きてゆける。
そんなしなやかな想いみたいなものも描いてみたかった作品でした。

当時、まあそれなりにしんどい色恋沙汰に巻き込まれて、東京から帰って来るたびに百年年取ったような気分に陥ったものですが、
でも自分で選んだ道だし、絶対に後悔だけはするまいと一瞬一瞬、ウザいよ大袈裟だろおめーって程、我を忘れて頑張ってました。
で、当初の予想通り、あれだけの想いをこめても破局するもんは破局するもんで。
その反動はもうはや5年は経とうかという今になってもまだ尾を引いております。
それでも全く後悔することなく今という人生歩いているのは、あの時必死だった自分の心意気のお蔭だとは思ってるんですよ^^
ってあれ、超珍しく後書きで後書きらしい自分語りしてるよww恥ww

そうそう、エロ作文的には確か「初クンニ」「初手コキ」だった気がします(初エロはお兄様宅に贈呈した初オナニ)。
最新作のエロ作文と比べてみると・・・うーん、擬音擬態語は今のが上達した、かもしれない。
でも状況が「絵の様に」浮かぶかというと・・・過去作に軍配かなあ??
ともあれ、沢山書いてみる事ですね!がんばろ! 長文乱文駄文、最後までご拝読頂き本当にありがとうございました!

    

last updated/11/07/04

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