第1話


↓現ライラより警告↓
*2004年12月に完結済みの旧作です。原作は42巻が出たか出ないかくらい、だったはず。
*前サイト名、HNは伏せてあります…お察しください(涙)
*どうやら前歴三作目のパロ…にして、初の(悪趣味な)コメディらしいです。

シャッ、とカーテンを引く小気味良い音と同時に、 部屋一杯に広がる朝の光。 半覚醒の頭が鮮やかになる。 一瞬置いて、 マヤはシーツを跳ね除け、文字通り飛び起きた。 しまった…完全に寝過ごした、 今朝は速水さん早いって言ってたのに… 慌てて隣を見るが、真澄の姿はとうにない。 「お早う、チビちゃん」 窓を開けながら、光の中に立つ男が穏やかな声を投げかける。 冬の冷気が生暖かい室内に容赦なく滑り込み、 たちまち眠っていた感覚が目を覚ます。 「今日は君も早いんだろう。  そろそろ起きたほうがいいんじゃないか」 速水真澄はゆっくりとベッドに腰を下ろすと、 マヤの乱れた黒髪をかき分け、温かな頬を指でなぞった。 ひんやり冷たいその指の感触。 硬く冷たく、爪の先まで一分の隙もなく完璧な造詣の指。 マヤはうっとりと目を閉じる。 「おはよう」 微笑みながら、あてがわれた指の感触を楽しむ。 鋼の意志の主に相応しい、冷たい皮膚の下の骨をなぞる。 その間に浮き上がった静脈を辿る。 ふと、 既にシャツにネクタイまできちんと締めた真澄の腕時計に目を遣り、 マヤは硬直した。 「うそっ…!六時半―――!?」 「ほら早くしろ。俺と一緒に出たいんならあと15分しかない。」 慌てて手を振り払い、ベッドから飛び降りようとして… 半裸の自分に再びフリーズする。 真澄はクスクス笑いながらその頭にバスローブを投げかけた。 「ひどいぃ…起きた時に…」 「三回起こしたぞ」 「う…」 もそもそとバスローブを羽織ると、 一目散に部屋を飛び出してゆく。 その姿はまさに、脱兎のごとくという表現がぴったりだ。 真澄は身を捩って笑いを堪えると、 そのままベッドの中に半身を埋めた。 まだ枕に残る、ほのかな彼女の匂い… 朝からこんなに満ち足りた気分で笑える自分が、 まだ少し慣れない感覚でいるのだが… とにかく、とてつもなく幸せなのだ、という事はわかっている。 枕を引き寄せ、甘い香りにたゆたううちに、 ふっと眠気が襲ってきた。 そういえば、昨夜もあまり寝ていない… だってただでさえマヤに会える時間は限られているのだから… 眠るためだけに残された時間を削りでもしなければ いつ彼女の声を聞き、彼女の肌に触れ、 彼女を感じて生きろというのだ… ああしかし、いかん、このままでは寝てしまう… 真澄は必死で眠気を払おうとしたが、 一度身体を横たえてしまうともう起き上がれない。 いつしか、眠気と闘いながら眠ってしまっている。

高速で身支度を済ませたマヤは、 真澄はとっくに外で待っているものと玄関から飛び出した。 広い速水邸の芝生をとんとんと走りながら、 覗き込んだガレージの中の車内は…空っぽである。 「あれ!?」 首を振り、もう一度屋敷内にパタパタと入り込む。 全く、無駄に広いとちょっとした移動が大変な運動だ。 二階へと続く階段を駆け上りながら、 「速水さーーーん??どこですかーー?」 返事はない。 寝室のドアを開けると、 自分を起こしたときのままで眠っている真澄を発見する。 マヤはその腕を持ち上げ、時計を見て、 「うわーーーーっ!速水さん、起きてっ  遅刻しますよっ」 はっと目を開ける真澄。 「なんで起こしてくれないんだっ」 「起きてたじゃないですかっ」 バタバタと部屋を飛び出す、寸前マヤが気づいて窓を閉める。 部屋を出ると真澄は既に踊り場まで駆け下りている。 と、 「あ、背広…マヤ、寝室のソファにかけてあるから!」 「う、背広?」 慌ててもう一度寝室へ。 まずい、まずいぞ。 そもそも遅くなったのは自分の寝坊のせいである。 これで真澄まで遅れては… 焦ったマヤは、背広を引っつかむと転がるように階段を駆け下りた。 その姿を目の端に捉えた真澄は、思わず 「馬鹿!マヤっ 急ぎす…」 「きゃあっ!!」 「うわっ」 それはもう、 『奇跡の人』の際、孤児院で修行中の亜弓が 階段でリンゴを踏んで転げ落ちたのに負けず劣らずの 見事な転びっぷりであった。 マヤの身体はたっぷり階段ひとつ分転げ落ちると、 踊り場から駆け上がる途中の真澄の身体にもろに衝突する。 そのまま二人は倒れこみ、 マヤは真澄の膝に顎をぶつけ、 押された真澄は後ろの壁にしたたか頭を打ち付ける。 「くう…」 「った…」 暫し、二人ともそれぞれ打ち付けたところを押さえて蹲り… 「この馬鹿娘っ!!!  仮にも女優の癖に、どうしてそんなにおっちょこちょいなんだ君は!」 最初に声をあげたのは真澄である。 「だって…速水さんがねちゃうからっ」 とマヤも涙目で答え、 互いに手を伸ばして起き上がろうとし… 硬直する。 涙目で顎を押さえているのは、真澄。 頭をさすりながら手を差し出しているのは、マヤ。 「は…?」 二人して暫し呆然と顔を見合わせる。 互いに、もうひとりそこに自分がいる、などと瞬時に察知したわけではない。 鏡に映すのと違って、自分が思い描いている姿と実際は大分異なるものである。 それでも。 「な…マヤ…?」 「あの…え、ええ?」 真澄の低く穏やかな声が、頓狂な声を出す。 マヤの眉間に立皺が刻まれる。 互いに、互いの姿が入れ替わっているのをようやく理解しはじめる。 web拍手 by FC2

どうやらガラパロってやつは寒い季節に盛り上がるものらしい…
前歴サイトで最初に公開した「ど長編」の最終更新日が2004年12月8日。
で、この『交換』が3作目で、これまた全10話あるのを12月14日に仕上げているところを見ると…
如何に発病当時のパロ症状が重篤であったか、がわかろうというもの(恐っ)。 コンスタントに省エネ更新続けてる現在のパロ熱は…まだ微熱ということですねw

    

last updated/04/12/14

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