第2話


↓現ライラより警告↓
*2004年12月に完結済みの旧作です。原作は42巻が出たか出ないかくらい、だったはず。
*前サイト名、HNは伏せてあります…お察しください(涙)
*どうやら前歴三作目のパロ…にして、初の(悪趣味な)コメディらしいです。

「はあああ〜〜〜!!!??」 溜息とも叫び声ともつかぬ唸り声。 しかし、そう仰天ばかりもしていられないのである。 マヤは――真澄の姿をしたマヤは、ふとその腕時計を見て、 「速水さんっ、時間、ほんとにやばいよっ」 と息を呑み、走り出した。 思わず、マヤ――の、姿の真澄も後を追う。 パタパタとガレージまで走り、ドアを開けて乗り込む…が、助手席に座るのは真澄の姿のマヤである。 本体の真澄は、運転席にすっぽりおさまるように小さい、マヤの姿。 「はあ…何てことだ…」 思わずハンドルの上に顔を埋める。 が、 これ以上考えると頭がおかしくなりそうだ。 兎に角、出社しなければ…この姿で!? 屋敷の門がゆっくりと開かれ、真澄の運転する車が滑り出す。 「は、速水さん〜〜!!コレ、どういうことなの!?」 「俺が知る訳ないだろっ」 「きゃーーーっ あたしが車運転してるなんてなんか変〜!!」 「変じゃないっ 君こそ俺の声でキャーキャー騒ぐんじゃない!気色悪いっ」 「気色って…酷い速水さんっ」 マヤがぷうっと頬を膨らませる。 いつもは可愛いその仕草も、自分の顔がやるのでは笑えない。 「うわ…それやめろマヤ…」 「え…あ、あはははは」 「う…ふ、ふははははは…」 どうやら極限状態になると 人は笑いがこみ上げるものらしい。 ひとしきり身体をゆすって笑っていたが、 とても笑っていられない事態である。 身体が違うと、いつもは手足も同然の自分の車でさえ勝手が違う。 真澄は何度も、信号を見落としたり人を轢き殺しそうになりながら、 なんとか大都芸能のあるオフィス街まで進んでゆく。 どうやら中味が違えども、マヤの手の不器用さは変わらないようだった。 「うわっ」 マヤが突然声を上げる。 「どうしよう、今日舞台の初顔合わせで…それで絶対出なきゃいけないのに…」 「その姿で行けるわけないだろ…キャンセルの電話を入れなさい」 「そ、そうですね…」 マヤは自分の鞄を探ると、ピンクの携帯電話を取り出す。 Prrr… と、何度目かのコール音の後、 「もしもし、マヤちゃん!?」 「あ、桜小路君?北島です」 「…!???」 その会話を横で聞いていた真澄が慌てて携帯を奪い取る。 「あああーーーーっと、もしもしっ 北島ですが!」 「マヤちゃん?よかった、もうこっち向かってるよね?」 今度の舞台は『紅天女』以来久しぶりにマヤと桜小路が競演するということで、ちょっと話題の舞台である。 とはいえそこまで大掛かりなものではなく、 桜小路の旧知である若手演出家の初舞台ということで、 マヤが頼み込まれる形での出演であった。 当然、桜小路との共演というのも気に障るところではあるが、 『紅天女』ともあろう者が迂闊な舞台に出てよいものかと初めは渋っていた真澄である。 ―――何がいい舞台かなんて、やってみなくちゃわからないでしょ。 と、マヤに押し切られてOKを出したのであるが。 「それが、北村さんの都合で今日の顔合わせキャンセルになっちゃったんだ。  昨夜連絡回そうと思ったんだけど、携帯繋がらなくなってたろマヤちゃん」 当然だ、俺が電源切ったからな。 真澄はふん、と口の端を上げる。 「そうか、よかった。実は今遅刻しかけてて…」 「あははは、やっぱりね。  それで…僕も今日は特に予定ないし…」 真澄は思わずニヤリとしてしまう自分を抑えられない。 「できたら、今日どこか遊びにいかない?  最近マヤちゃんの顔全然みてないし」 「ふふふ…悪いけど、今日は一日俺…速水さんと過ごさなきゃならないみたい。  すま…ごめんなさい」 「えっ?でも今日は月曜だし…速水さん会社だろ?」 「ああ、会社も会社、外せない会議が朝っぱらから三つも…  う、ええっと、そんなこんなでさようなら〜!!!」 ピ、 と携帯の電源を切り、マヤに手渡すと、なんとも変な顔でこっちを見ている。 「速水さん…演技下手だね…」 「うるさい」 と、呟きかけてまた前の車にぶつかりそうになり、 真澄は慌ててブレーキを踏んだ。 web拍手 by FC2

ラブコメには王道パターン(?)の逆転物語デスよ。
前歴では全10話でしたが、今回流れを断ち切らない形で何話かくっつける予定^^

    

last updated/04/12/14

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