第7話


なんて眼であたしをみるんだろう… 髪を撫でるその手の動き、 切なさと苛立ちと…愛しさ、を湛えたような瞳で 速水さんはあたしを見つめる。 何かがどこかですれ違っている、 それに苛立ってあたしを捻じり上げ、押さえつける、 それでいて…狂おしいほどの… 愛情を、感じてしまうのは間違いなのだろうか… そしてあたしは。 恐れながら、理解できないと悩みながら、 それでも…触ってもらえること、声が聞けること、 幻ではなくそこにいること…この事実に 身体の奥から小波のように悦びが湧き上がる。 せめて言葉を… 愛しているという言葉を捧げたい それだけでいい、だからそんなに辛い目であたしを見ないで、 速水さん… シャツのボタンを全て外して、 露わになったその身体ははっとするほど美しかった。 骨格の上に均整のとれた筋肉がまとい、 それは呼吸するたび上下に躍動する。 腕が伸びる、 指先が肩に掛かって、服がずるりと二の腕までずり下がる。 腕はそのままあたしの半身を起し、 背後からあたしを抱きしめる。 彼の肌と、あたしの肌がぴたりとくっつく… 「キレイだな、マヤ…お前の身体…」 溜息をつくように、 そして大きな手がするりと胸の間に滑りこむ。 ああ、そう…あたしも思ったの…速水さんの身体、とってもキレイだって… そのことさえ伝えられない、 もどかしさの代わりに大きく息を吐く。 「この肌が、他の男に触れる…桜小路なんかに?  …駄目だマヤ…許されない…」 下着の間に、指はどんどん滑り込んでゆく。 唇が耳元に寄せられて、 くちゅっと音をたて、冷たい舌先がなぞる。 とたんに、 得体の知れない感覚が耳元から首の付け根に走り、 「ん…」 と、 今まで出したことのない 溜息のような声を出してしまう。 ずる、 と下着が腰までずり落ちた。 掌があたしの胸に触れる、始めは指先でそっと、 それから少し押してみて…ついにふわりと包み込まれる。 丸く、優しく、ごくゆっくりと。 だけどだんだん…指の力は強くなってきて、痛いくらいに… いや、痛い、痛…速水さん…の、息も途切れ途切れに…苦しい、 「いた…い」 やっと、口が動いた。 はっと息を呑んで、頬が摺り寄せられる。 ごめん、 という声が聞こえてきたような気がした。 けれど手は止まることなく、 あたしの片方の胸を下から掬い上げるようにして… 突然、先端に唇が覆いかぶさった。 ちゅるりと、 温かな唾液とその舌先に丸め込まれて… やがて…強く、優しく吸われ始める… 快感はそこから何故か徐々に下半身に降りてゆく。 こんな、 こんな感覚は…初めて…と、 伝える手段は何…? わからない、あたしは貴方にとってはまだ子どもに過ぎなくて、 どうして貴方があたしにこんなことをするのかもわからない。 ただわかっているのは、 あたしは貴方のものだから…だから与えられる全てを あたしは悦んで受け入れる、ただそれだけ…

マヤは抵抗しない。 その眼も…俺の勝手な思い込みに過ぎなくとも、 恐怖の色では…ないような気もする。 含んだ胸の先端を軽く甘噛みすると、 もう先ほどから少しずつ大きくなってゆく 彼女の溜息のような喘ぎに力がこもった。 室内にそれは奇妙に大きく響いて、 途端に、少しずつ大きくなってゆく俺自身が刺激される。 唇を離すと とろりと唾液が糸を引く。 指でそれを押し付けながら絡み付けると 薄い肩がきゅっと縮んで首がすくんだ。 「マヤ…気持ちいいか?  何も言わなくていいから、それだけ教えてくれないか?」 すくんだ首元に囁く。 唇が動いたようだ。 「…嫌でも俺はやめない、  だけど…気持ちいいいならその証拠をみせて」 右手をするりと這わせる。 可愛らしい臍の窪みに少し指を入れて…それからその下… 薄い膜に指を沿わせてみる。 ぐっと、 白い太腿が摺りあわされる。 縦に、きゅっと押し付ける… 肉は柔らかく、くにゃりと歪んで、指先を包み込む。 「あ…ぁ…」 なんて声を出すんだ… お前のこの身体からそんな声が引き出せる。 もっと…もっと搾り出せ、マヤ… 押し付けた指を、 奥に…奇妙な柔らかな渓谷、そこを潜って、また浮上する。 なぞって、押し付けて、それから少しだけ… 膜ごと摘み上げる…徐々にしっとりと湿った指先で。 「う…くふっ…」 「可愛い…いい子だな、マヤ…」 最早すっかり引き剥がされた服、 それを足元に丸めて押しやる。 シーツの上の柔らかな肉は、 ただ一枚の膜だけを情けなくまといつけて 俺の身体に絡みつく…求められていると思わず勘違いするほど マヤの身体は俺の刺激を全て受け入れ、素直に反応する。 「指がいいか…それとも口でしようか?」 「や…くちは…やだ…」 その掠れ声に 俺はハッと顔を上げた。 「口は駄目?  じゃあ指でしてもいい…?」 改めて覗き込んだマヤの顔は、 困惑と羞恥心に…歪みながらも、眼は俺を見つめていた。 …避けられていない? …マヤ…? 「あ、あいしてる…」 うまく動かない口を必死に動かして、 信じられないような言葉が転がり出た。 「はやみさ…すき、だいすき…ずっとすき、もうずっと…」 呆気にとられた俺の顔は さぞかし間抜けなことだったろう。 捻じれた狂気が垣間見せた幻聴か?と 思わず頭を振りたくなるような。 「うそだ」 マヤが激しく首を振る。 涙を…ぼろぼろとこぼしながら。 露わになった胸の前で手を組み合わせ、 ちがう、と唇が動く。 「すき…だいすき、だいすきです、おねがい…  聞いて…会いたかったの、三年間ずっとずっと…!!」 ひっ、 としゃくりあげて、マヤが泣く。 真っ赤な顔は、涙に髪の毛が張り付いて、 上半身を小さく丸め、 子どものように丸くなって、 俺が今まで、 今の今まで聞こうとしなかった言葉を呟いた。 うわ言のように、 何度も何度も、呟いた。 「速水さん、紫の薔薇の人、もうどっちでもいいの、  すきなの…だいすき…どうしていなくなったの?  どうして…幸せになってくれなかったの?どうして…」 声にならない声を、今度は俺が出そうとしている。 記憶を立て直す…十年間の記憶、マヤと俺の時間、言葉、 表情、仕草、そして薔薇、カード…婚約の破棄…祝福の言葉、その意味… フラッシュバックする映像と感覚、 その奥に潜む真実の…想い…に、 なんてことだ… 衝撃が脳天から胸の奥を突き抜けて弾ける。 「マヤ…あ…マヤ…!!」 馬鹿みたいに、声を裏返して。 俺は彼女を抱き起こす。 何を見ていたんだろう、今まで一体何を…!! マヤの瞳を覗き込む。 今度こそ、その想いと、言葉と真っ直ぐに向かい合う。 眼で問う。 彼女が頷く。 …信じられない…信じてもいいのか? 「本当に…?」 唾を飲み、 今更になって触れるのも恐ろしくなった 彼女の肩を抱きながら 俺は恐る恐る呟いた。 彼女はひとつしゃくりあげ、 困ったように…微笑んだ。 「俺は…こんな…俺なのに…?」 震える腕をゆっくりと上げ、 その指先が俺の髪に触れる。 狂気が、するすると溶けてゆく。 指が髪をかきわける、そして 「馬鹿な人…ほんとに、  なんにもわかんなかった…?」 と、 優しく、微笑む。 俺は、俺はもう…どうしたらいいのか、 丸っきり…ただうろたえて、息を呑むばかりで。 そんな俺の 頬に彼女がふわりと触れる。 言葉、十年の時間を越えた言葉を、今こそは。 「マヤ…愛してる…俺も、いや  俺のほうが、たぶん、ずっと前から…」 今度はマヤが眼を丸くした。 二人して次の言葉を探す前に…俺はただ抱きしめた。 彼女の幸せを、 今度こそ迷いなく導き出し、抱きしめると… そう祈りながら。 END. ***ゴメンナサイ、みくうさん(><)*** >キリリク内容 「42巻の仕返しにマヤにも婚約してもらう」→「その会場での美しいマヤに白目社長」 →「悶々悶々悶…」→「二人きりで会う、そしてプッツン社長様」→ハッピーエンド☆ はい、ほとんどリク内容から大きく逸脱しております(; ;) みくうさんが一番見たかったであろう「マヤの婚約披露宴シーン」が 間接表現に…あうう、言い訳させてくださいいっっ ああゆう豪華絢爛シーン(?) を描くにはライラの経験&知識&時間がなくって…デティールを追求しないとなんか いまいちつまんないし、手抜きしたくないけど妄想はパタパタ変な方向にいくし… その上、「地下」を期待して来たお客様にとっては「はあ?で?」って終わり方です… その終わり方ももう強引もいいところです、大変申し訳ない(><) なんかなあ…エロレベルでゆったら3くらいでしょうか…しかしMAXにしようとすると マヤが全て受け入れて大人しくなっちゃうし、社長が「うう、こんな酷いことさせんなーー!!」 と呻かれるので…何度も「イケるって、大丈夫!!ヤッチマイナアア〜〜〜ッ」 と激励したのですが(イヤほんとに)、駄目でしたっ(><)彼らの意思には逆らえません(!!!!) 今回のリクで浮かんだのは何と「後ろからナイフ」、そのシーンのみでございました。 そこかしこにライラのフェチズムが溢れてますね、お恥ずかしい… 兎も角、これがライラの初UG…作品でございます。 例によって長編になってしまいましたが、みくうさん、本当にありがとうございます(^^) 2005/01/30 ライラ web拍手 by FC2

…当時のあとがきそのままコピペしてみました。あ、勿論旧HNは替えておきましたよ?
あのこっぱずかしいHNはねえ…生まれて初めてネット界でHNを名乗らねばならぬ状況に陥った際、
足元にあったんですよアレが――夏だったもので…
キャラと話し合いながら試行錯誤で先に進む様な、まだまだ初々しい頃のエロ作文でございました。
今や――日常のほんの片隅から怒涛の勢いでエロパロを引っ張り出し、強引にマスマヤにおっかぶせる、
という荒業に挑んでは引かれているような気もしますが…

それにしても、ここまで精根込めて書いた(我ながら読み返して感じた、質は兎も角としてコレ結構時間かけてるわと)にも関わらず
六年経った頃には内容をすっからかんに忘れ去り、揚句リクしていただいたみくう様の事まで漂白剤をかけたかのように忘れていた…
という、あまりの自分の鳥頭ぶりにつくづく嫌気が差しますね…
旧フォルダをひっくり返してみる度、あちらこちらで拝見するお名前、サイト名を発掘し、驚愕し、赤面し、一人凹んでおります――
ああ、ホントに、当時遊びに来て頂いたお客様で、この鳥頭の事をちょっとでも覚えている方いらっしゃいましたら…
「実はね」っとコッソリ話しかけてみてください――凹みつつ、感謝感激の投げキッスを送らせて頂きます!!(イラネー

ではでは、長文・乱文・迷文、ここまでご拝読頂き本当にありがとうございました!!

2011/02/08 ライラ

       
inserted by FC2 system