はい、ここから怒涛の超オリジナルマイ設定スタート!!!・・・長いでしょ、まだまだ続きますスイマセン^^;
last updated/12/4/28
「あの・・・ここは?」 「閑静な住宅街の一角。少し歩くぞ」 戸惑うマヤを尻目に、真澄はさっさと歩いてゆく。 冬空の電信柱の上から鳩が一羽、飛び立つのが目に入った。 辺りは驚くほど静かで、アスファルトの上を歩く二人の足音まで聞こえそうなほどだ。 冷たい空気に一瞬首を竦めて、それから慌てて真澄の背中を追った。 枯れた蔓草の絡みつく塀が長々と続き、その角を曲がると急に入り組んだ小路が現れる。 真澄はその道を迷いなく歩く――時々、二歩後ろのマヤを僅かに振り返りながら。 「・・・速水さん、ここに来たことあるんですか?何だかよく知ってるみたいですね」 「昔近くに住んでたしな」 「えっ・・・だって速水さんの家は」 かつて速水邸での軟禁生活を余儀なくされた頃のことを思い出し、マヤは首を傾げた。 あれはもっと郊外の方にある、高級住宅街のお屋敷だった。こことは少し趣が異なるはずだが―― 「まだ、藤村真澄だった頃のことだ」 「え・・・あ・・・!」 「――何だ、知ってたのか?」 真澄が方眉を上げて振り返った。 マヤはコートの襟を抱え込むようにして、ギクシャクと応える。 「あ、はい・・・ほら前に速水さんちに行ったとき、家政婦さんが」 「成る程ね。といっても住んでたアパートは既に跡形もないし、 この辺りも随分変わった・・・最後に来たのはいつだっけな」 特に気にする様子もなく呟くと、それから軽く空を見上げた。 研ぎ澄まされた彫刻のように端正で、冷徹で、完璧すぎて近寄りがたい程の横顔に―― ふと、懐かしい何かを想うときの人間らしい表情が横切った。 その瞬間、自分の心にも――何か、暖かな寂しさが過ぎるのをマヤは確かに感じとる。 多分この見慣れない景色も、いずれ忘れがたい記憶になるのは明らかだろうと、 根拠のない、だが確かな予感が囁いている。 暫く黙ったままで歩いて、それからようやく呟いた。 「変なの」 「何がだ」 「・・・速水さんと、多分、私も。」 「・・・?」 「教えてあげません、それにやっぱりちょっと意地悪だし」 意を決して、マヤはそこでピタリと立ち止まる。 真澄もギクリと立ち止まり、それからあからさまに眉をしかめて振り返る。 「いつ意地悪なんかした?」 「だから教えてあげませんっ」 「・・・これだから女の子の、いや女優の心を読むのは厄介なんだ・・・ お姫様、何が不満なのか残念ながら鈍感なファンは気づけなくて――」 「バラですっ」 「え?」 「ほら、わかってない」 「バラなら沢山、確かに千秋楽には行けなくて申し訳なかったが・・・」 「紫の、バラです!『ふたりの王女』で、私・・・速水さんから、まだ貰って・・・」 最後の言葉は、やはり掠れて消えてしまった。 はっと、真澄が息を呑んだような気がするが、多分気のせいだ。 堪えようと頑張ってみたものの、涙が勝手に零れそうになる。 だけどここで泣いてしまうのは――あまりに子どもっぽすぎる、また笑われるかもしれない。 だから精一杯、涙が零れ落ちないようにと顔を上げた。 言葉が出ないなら全身で伝わればいいと。 ――私は、あなたの手から、紫の薔薇が欲しいんです。 ・・・と、顔を上げたら。 やはり、そこにはじっと自分を見下ろす、 決してその真意を覗かせてくれることはない、不思議な微笑があって。 ああ、だけどその瞳は・・・見上げたこの瞬間、確かに暖かくて優しい色を浮かべている。 見間違いじゃない、勘違いでも・・・多分、ない。 「鈍感だな――」 掠れたような声が、真澄の薄い唇の間から降り注ぐ。 マヤは鼻をすすり上げ、ぐっと、睨み付けるようにして真澄を見上げる。 背後から郵便局のバイクが二人の側を通り過ぎてゆく。 その音があまりにのんびりしていて、周囲の風景はやけに静かで冷たくて、 その中にある緊張した自分たちの会話は、ひどくちぐはぐで浮き上がっている様な気がする。 「・・・誰が?」 「俺も、君も」 「私も・・・って、」 「わかった、わかってる、だがもうちょっと待った――泣くなよ」 「泣きませんよっ、もう・・・もう何か、ほんとに悔しいっていうか・・・ 違う、バカみたいです・・・ごめ・・・ごめんなさいっ 怒るなんておかしいのわかってるんです、なのにいつまでたって子どもみたいに――」 「・・・ああ、申し訳ありません、全ては勿体ぶった愚かなファンの失策なんです―― でも少しだけ、泣くのは待ってくれませんか?」 意思に反してぱらぱらと零れ落ちる涙、上気した頬、上ずった声。 情けなくって、苦しくて、顔を真澄の前から遮ろうと手をやる。 ――その小さな手のひらを、ふいに真澄が両手で包み込んだ。 急に伸ばされた手のひら、その力、そっと触れ合っただけではわからない互いの質感。 そして、それよりもはっきりと伝わってくるお互いの暖かさと・・・感情の流れに。 ――暫し、ふたりは言葉を失う。 「・・・もう少し、ご機嫌取りにお付き合いくださいませんか、北島マヤさん――?」 「どういう・・・ことですか?」 真澄は黙ったまま、すっと3メートルほど先の袋小路に視線をやった。 普通の民家と民家に挟まれた、二階建ての小さな建物。 プランターから溢れかえったハーブや植木、その脇にとめられた自転車に幾つかの木箱。 びっしりと蔦に覆われて一見してはわからなかったのだが、その隙間から、小さな木製のドアが覗いていた――
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