第6話



「以上ですね、ご利用ありがとうございました!」 

「ああ、どうもご苦労様」 

元々荷物の少ないこともあり、せいぜい二十分程で運搬は終了し、業者は風のように去っていった。 
先ほどまでのアレは何だったのか、と思い出しては赤面しつつ、マヤは引越し業者にテキパキと適切な指示を送る真澄の姿をぼんやり眺めるばかりだった。 
乱れた様子など全く見られず、完璧にスーツを着こなし、完璧に仕事をこなす、いつもの速水真澄その人を。 

「さてと、開封作業も手伝ってやりたいところだが、流石にもう時間がない。 
 これ以上遅れたら水城君に大目玉だ――後は自分でできるな?」 

「は、はい!あの――すごい、よく見たら家具とかも全部ついてるし、こんな広くてキレイなとこ、 
 本当に有難うございます」 

「とりあえず服の箱から開けろ」 

「え?――あ・・・・・・」 

その様子を見た真澄の方も、先ほどまでのアレは何だったのか、と思わずにはいられなくて苦笑する。 
実は下着の方はとても使い物にならなくて、業者が来る前に洗濯機の中に放り込んであったのだ。 

ここでいい、というのを押し切って、マヤは駐車場まで降りて真澄を見送った。 

「膝、すまなかったな。すぐ消毒して。跡は残らないと思うから」 

「こんなの!大丈夫ですよ、見た目ほど全然痛くないし」 

「今後は絶対に走行中の車から飛び降りるなよ」 

「――今後は子供みたいな嫉妬して八つ当たりしないでくださいね」 

「――言ったな」 

そっと頭を下げて、軽くキスを落とす。 

「じゃあ、また」 

「うん――さようなら」 

「ちなみに、手は洗ってないので」 

「・・・・・・!」 

信じられない、今すぐ――と叫けぶのを、窓を閉めて遮った。 
その向こうでむくれている彼女は、本当に可愛い。 
このままだとまた車内に連れ込みそうで、真澄は慌てて車を出した。 
バックミラーで、彼女が小さく手を降るのが見える。 
この幸せが、あと数分後には日常の煩務に紛れて消えてしまうことを予想するだけで憂鬱な気分に襲われる。 
――ほら、もう彼女は見えなくなってしまった。 

会えない時間は尚も続くだろうが、確信を持って言える。 
俺はマヤに隠すものなど何もなく、完全に身を委ねることができる。 
マヤも、きっと同じように。 

だって俺は彼女に所有されているのだから。 

そして、彼女も俺に所有されているのだ。 


END.

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エロ描写って、二次作品は特に原作設定が前提としてあるだけに、よっぽど力量のある作家さんが書かれないとどうにも画一的になってしまうもんだなあ、と書きながら溜息をついておりました。う〜ん、難しい。
それでも書いてしまう理由は自分の暗〜い、恥ずかし〜い趣味趣向を発散させたいことにあるのは事実。 本作品での私的フェチネタは 「怪我をした膝」と、「中途半端なフェラ]の二点に尽きます(言い切った 中途半端……いやほんとに。今手元にある過去作品を眺めてみると、皆ソレな気がしてきました。 農耕、いや濃厚などエロ、いつになったら書けるのか。濃厚に、と思うとよりありきたりな文章になってしまう落とし穴。 ふっと湧いたイメージをうまいこと発酵させて素敵な腐臭漂う作品にすべく、マッタリ精進して参ります。 駄文ご拝読いただき、本当に有難うございました。

last updated/2010/10/24

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